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最高裁判所第三小法廷 昭和44年(あ)2165号 決定 1970年11月27日

本店所在地

大阪市南区西櫓町三番地

株式会社 楽天軒本店

右代表者

藤田義一

右の者に対する法人税法違反被告事件について、昭和四四年九月二二日大阪高等裁判所が言い渡した判決に対し、被告人から上告の申立があつたので、当裁判所は、次のとおり決定する。

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人鍋島友三郎の上告趣意は、量刑不当の主張であつて、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。また、記録を調べても、同法四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて、同法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 下村三郎 裁判官 田中二郎 裁判官 松本正雄 裁判官 飯村義美 裁判官 関根小)

上告趣意書

被告人 株式会社楽天軒

右代表者 藤田義一

右の者に対する御庁昭和四四年(あ)第二一六五号法人税法違反被告事件について上告趣意(上告趣意 書提出日昭和四四年一二月四日)を次のとおり弁明致します。

一、原判決は公訴事実どおりの事実を認定し被告人に対し罰金四百五捨万円也の刑を言渡しましたがこれは次の理由から刑の重定が著しく重くはなはだしく不当でありこれを破棄しなければ著るしく正義に反することが明白でありますので破棄を免れません。

二、即ち控訴審の控訴趣意書中にものべたように相被告人藤田一二江が被告人会社の会長であり且経理の権限の一切を握つていたものでありますから被告会社の代表者であります藤田義一は会計に関することは全然知らなかつたのであります。

しかるに右藤田一二江が被告会社の各支店の売上金を適当に減らして殊更に売上金高を低くして法人所得の申告をしていたものでありまして代表者といたしましては勿論監督不行届の点その責任は充分痛感いたしておりますが右の情状を考えるとき罰金刑の最高を科せられるほど悪質ではないのであります。

更に右過少申告によります脱税につきましてもその額について重加算税・滞納利子加算及び地方税等の支払等所謂税務行政上のあらゆる行政処分はうけておるのでありましてこの上最高額に近い罰金刑を科せられることは余りにも被告会社の情状を無視した判決というべきではないかと信ずるのであります。

なお又本件法人税法違反の相被告人藤田一二江は既に懲役刑に対する執行猶予の判決をうけており本件に対しては心から前非を悔い改悛の情をあらわしているのであります。

更に本件所得の過少申告の結果脱税した国税及び地方税についても納付期限内に全額納付いたしておりますし大きな税額にも拘はらず誠意を以つて納付いたしておりますこの被告会社の改悛の情を御斟酌下されば原審判決が著るしく重いことが分るのであります。

三、以上の理由から原判決が被告人に対して罪金四百五拾万円也を言渡したことは刑の量定重きに失しはなはだしく不当でありこれを破棄しなければ著るしく正義に反することが明白でありますので止むなく本件上告の趣意弁明に及んだ次第であります。

昭和四四年一一月一〇日

弁護人 鍋島友三郎

鍋島友三郎

最高裁判所第三小法廷 御中

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